「一人で考える」を支える方法は、すでにある
「まずは一人で考えてみよう」。時間を用意しても、何から書けばよいか迷う生徒はいます。短いメモ、先生の問いかけ、隣の人との会話。考え始めるための支援は、これまでも授業の中で工夫されてきました。AIとの対話も、その選択肢の一つとして考えています。
2026年11月から予定している公立中学校での探究では、「自分で考える → AIと対話する → 自分の言葉で整理する → 人と話す → 考え直す」という流れを試します。新しさを競うより、どんな条件なら生徒にも先生にも使いやすいかを確かめたいと思っています。
答えを受け取ることと、学ぶこと
例えば「ドローンで農作物の被害を減らしたい」という考えに、「今はどんな被害があるの?」「誰に話を聞くと分かりそう?」と問いかける。AIには、調べたいことや考える理由を少し具体的にする役割を持たせたいと考えています。
研究にも手がかりがあります。Bastaniらの高校数学の比較実験では、一般的な対話型AIを使うと練習中の成績が上がる一方、AIなしのテストでは不利になる結果が報告されました。教師が用意したヒントを使い、解答を直接渡さないようにしたAIでは、その悪影響が大きく抑えられました。ただし、AIなしのテストで成績を高める効果までは確認されていません。研究論文・著者公開版
高校数学の結果を中学校の探究にそのまま当てはめることはできません。それでも、AIの有無だけでなく、支援の仕方を考える必要があるという示唆は受け取れます。
広がりにくさを、授業の中で考える
問い返しが続くと、疲れてしまう生徒もいるかもしれません。AIの文章を写しただけでは、自分の考えを持ったとは言えません。操作に時間がかかったり、先生が対話の様子を追い切れなかったりすることも考えられます。
問いを短くする、使う時間を区切る、途中で先生や友達に相談できるようにする。AIの情報は資料や地域の人の話と照らし合わせる。こうした調整を、生徒の様子を見ながら先生方と考えます。
人との対話に、何を持ち寄れるか
AIで、人との対話を減らしたいわけではありません。むしろ、人との対話をもっと豊かにするために、その前にある「一人で考える時間」を支援できないかと考えています。
グループに持ち寄るのは完成した答えでなくても構いません。「こう考えた理由」「まだ分からないこと」があれば、友達も問いかけやすくなります。発言の回数だけでなく、理由を説明できたか、他の意見を受けて考え直せたかを見ていきたいと思っています。この視点は、国語・社会・理科などの授業でも、問いに合わせて確かめていけるはずです。